ざんねん習性

フクロウはなぜ首が270度も回るの?

夜の森の枝で首をひねって振り返るフクロウのイラスト

目玉がまったく動かせない、という弱点を首の可動域だけで押し切った力技の「ざんねん」設計。 Why can an owl turn its head 270 degrees? Its tube-shaped eyes are locked in place and can't move at all, so the neck has to do all the looking.

この記事の結論

目玉が筒型で眼窩に固定され、まったく動かせないのがフクロウの弱点。その代わり人間の2倍にあたる14個の頸椎で首を最大270度も回し、専用の血管システムで血流も確保するという力技で視線を確保しています。

🔍 ちょっと寄り道:生まれ持った気質という意味では、人にも生年月日から占う視点があります。気になった方は黒曜診断を覗いてみてください。

目玉が筒型で、眼窩に固定されたまま動かない

フクロウの目玉は筒型で頭蓋骨の眼窩に固定されており、上下左右にまったく動かせないため、横を見るには顔ごと向けるしかありません。多くの動物の目が球形なのに対し、フクロウの目玉は筒(円筒)のような形をしていて、眼窩にがっちりとはまり込んでいるのです。

私たちが視線だけを横に流したり、ちらっと上を見たりするような動きが、フクロウには一切できないのです。

ただし、この固定された筒型の目は、夜の狩りで獲物までの距離や奥行きを正確に測るのに役立っており、まったくの欠点というわけではありません。とはいえ「横を見たければ顔ごと向ける」しかないという不便さは、なかなかの「ざんねん」ポイントです。

目が動かないなら、首を270度回せばいい

フクロウが首を片側およそ270度も回せるのは、人間の2倍にあたる14個の頸椎を持ち、動かない目の代わりに首で視線を動かしているからです。片側270度といえば、ほぼ真後ろどころか、さらにその先まで顔を向けられる計算です。

この極端な回転を支えているのが首の骨の数で、人間の頸椎が7個なのに対し、フクロウは14個もあります。目玉が動かないという弱点を、首の骨を倍にして力技で解決したわけで、「目を動かす」というごく普通の機能を丸ごと首に肩代わりさせている、なんとも「ざんねん」で逞しい設計です。

力技のカバーにも、さらに追加の工夫が必要だった

首を270度回しても脳への血流が途絶えないよう、フクロウは首の付け根付近の血管が拡張して血液を溜め込む「貯水池」のような仕組みを備えています。

そもそも、首を270度も回すこと自体が、本来なら体にとって大問題です。多くの動物がそこまで首をひねれば、血管が引き伸ばされて脳への血流が途絶え、脳卒中のような危険にさらされてしまいます。ジョンズ・ホプキンス大学の研究チームがフクロウの血管を造影剤で調べたところ、首を回すほど血管が拡張して血液を一時的に溜め込むこの仕組みのおかげで、極端に首を回している間も脳と目への血流が途切れないことが分かりました。

目が動かない弱点を首でカバーし、そのカバーにさらに専用の血管システムまで用意する。「ざんねん」の上に工夫を重ねた、フクロウの体の健気さが伝わってきます。

出典: "Owl mystery unravelled: Scientists explain how bird can rotate its head without cutting off blood supply to brain" Johns Hopkins Medicine(EurekAlert!配信), 2013. eurekalert.org

豆知識プラスワン

一方でフクロウには、ざんねんとは正反対の特技もあります。羽の外側の縁にあるギザギザ(セレーション)が翼の上の空気の流れを整えて乱流を抑え、羽の表面のビロードのような細かい毛が羽同士の擦れる音を消し、さらにふわふわの体と体重に対して大きな翼、ゆっくりした羽ばたきが合わさって、ほぼ無音で飛ぶことができるのです。このセレーションの仕組みは、日本の新幹線のパンタグラフ(集電装置)の騒音を減らす設計にも応用されています。

ミニクイズ:フクロウは目玉を動かして横を見ることができる?(タップして答えを見る)

こたえいいえ。フクロウの目玉は筒型で眼窩に固定されており上下左右にまったく動かせないため、横を見るには顔ごと、つまり最大270度も回る首を使って向けるしかありません。